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‘恋 love letter 文 ’― 谷崎潤一郎とその親友・佐藤春夫、関わり深い二人の作家の恋文が、今回の特別展のテーマです。
佐藤春夫は、谷崎の妻・千代と恋におちます。谷崎に疎まれ虐げられていた千代への同情が、愛へ熟していったのです。一度は、千代を譲ると佐藤に告げた谷崎でしたが、土壇場で言を翻します。これを機に、谷崎と佐藤は絶交。が、やがて二人は和解、結局、千代は佐藤の妻となるのです。 |
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| 18歳の佐藤春夫 明治43年
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| 佐藤春夫の恋文 谷崎千代宛 |
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今回展示する佐藤の恋文は、谷崎の翻意から絶交に至るまでの間、ひそかに逢っていた千代に手渡されたもの。原稿用紙20枚の裏まで言葉を埋め尽くし、数日にわたって溢れんばかりの想いを書き連ねています。文面はなまなましく時に |
| 滅裂として、詩人の魂のたかぶりは、もはや心の均衡など意に介さないかのようです。その激情は、『殉情詩集』や「秋刀魚の歌」といった、佐藤畢生の詩編・絶唱へと結実していきます。 |
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一方、谷崎が遺した恋文は、いずれも、相手を崇拝し仕え支配されたいとうったえる、型にはまったものです。谷崎好みの愛のかたちを演出し虚構していく恋文――。その虚構こそが、作品へと昇華されていくのです。根津松子と「盲目物語」「春琴抄」、渡辺千萬子と「瘋癲老人日記」……。恋文を支配している情熱は、女性へのものであるとともに、あるいはそれ以上に、創作へと向けられているかのようです。
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| 昭和3年頃の谷崎潤一郎 |
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| 谷崎潤一郎の恋文 根津松子宛 |
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展示では、個性豊かな二つの恋文群をはじめ、宛名となった女性たちのおもかげを偲ばせる愛用の品々や貴重な肖像写真、恋文にまつわる作品の初版本等々、多彩な資料で、二人の作家の愛の輪郭を浮き彫りにしていきます。
文明開化の波が華やかにもざわめかしい東京のただ中に生まれ、倒錯的な愛と性にこだわり続けた文豪・谷崎潤一郎。空が山が海が、まばゆく青い南国・和歌山は新宮の自然の中で、感性を育んだ天性の叙情詩人・佐藤春夫。対照的な二つの個性が書きとどめた恋文は、作品世界と絡みあいつつコントラストを際立たせ、今、それぞれの愛がよみがえります。
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