美しくそれぞれに個性豊かな、谷崎作品のヒロインたち。そしてなぜか、彼女たちと男たちとは、「夫婦」のかたちをとって現れることが多いのです。
「痴人の愛」のナオミと譲治の、お伽噺のような家を舞台にした二人だけの「シンプルライフ」。「蓼喰う虫」の「仮面夫婦」美佐子と要は、どこにでもいそうなふつうの妻と夫にみえます。
「春琴抄」のお琴と佐助の夫婦は、生涯「主従」の間柄を貫きました。「猫と庄造と二人のおんな」の庄造にとって、二人の妻との関係は、手ごたえほどのものもない幻のようです…。
いかにも、彼らは夫婦なのです。が、そんな二人の関係は、婚姻制度に裏づけられ良識の型にはめられた世間並みの夫婦のかたちにはおさまりきらない、風変りなものにみえます。
夫婦の間に血縁のつながりが絡むのを恐れて子を生むことを拒み、「他人行儀」で「多少の間隙」のある「妻と夫であって、そうでない」という、
いわば「仮象の夫婦」を理想としていた谷崎。そんな谷崎じしんの夫婦観や結婚観も、その作品の夫婦の有り様と関わっているのでしょうか。
谷崎が描く「“夫婦”のカタチ」のウラには、どんな事情や背景があるのか。谷崎や、その周辺の現実の夫婦関係をも絡めながら、読み解いていきます。
■特別展開催時の記念館入場料は一般600円、65歳以上300円、高校・大学生400円、中学生以下無料となります。
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