谷崎潤一郎記念館「俳句講座」  

兼題 入学
席題 蝶

 

黒川悦子選

三日雨抜けて初蝶高からず         相坂よしの

しじみ蝶フェルメールより青き青

父に似て眉太くなり入学す          井上陽子

逆上がりくるりと回り入学す

入学のととのふ母校訪ね来し        入谷千恵子

分校の新入生は二人かな

学ぶこといくつもありて入学す       河野ひろみ

初蝶の光の如く舞ふ真昼

入学や母の手離れ並ぶ列          坂本英司

緊張もすぐにほぐれて入学す

入学や子どもは世界広げたり        坂本果奈美

朧月ほどけし雲の帯照らす

入学や何もかも新しくなる         佐藤千枝子

初蝶の何か幸せ運び舞ふ


襟白くまなざし清く入学す         玉手のり子

襖絵の金色あせず蝶の昼

夕飯を食べつつ眠る新入生         土井純子

雨の蝶路面擦りてせはしげに

制服の丈長きかな新入生          中西英二

初蝶のゆらゆらゆらす翅二つ

入学に友を得し子の足軽く         福岡秀和

入学の子が主役なりレストラン

入学式正門大きく開きたる         松永祝子

蝶来るやショパン流るるカフェテラス

親の手をしつかり掴み入学す        安永文子

自由なり蝶の世界はどこまでも

  

         選者吟

            角帽を目深に被り入学す

            蝶もつれ合ひつつ垣根越えてゆく